レッスン報告
2023年08月16日

都立高校の合唱指導に行ってきました 2.表現

今回の内容は以下の通りです。

歌の語源は「訴える」
  • 音読と朗読は違う
  • 詩のストーリー、テーマを共有しているか
  • 幼児の歌は何も表現していない

歌の語源は「訴える」。TBSドラマ「表参道高校合唱部(2015年)」でもセリフに登場しました。

 

音読と朗読は違う

音読には、理解のための音読と、理解したものをその意味内容に即して表現し、他人に伝え、鑑賞させるための音読とがある。後者は、前者と区別して「朗読」「表現読み」とよばれることもある。

コトバンクより引用

歌の歌詞は聴衆に訴えかけるものですから、音符の下の文字をただ読み上げるのではなく、音楽に乗せて朗読する必要があります。事件や事象を聴く人にわかりやすく伝達することを目的とした「語る」こととは大きく異なるのです。

歌詞を持たない「鳥が歌う」などの場合もありますね。この場合も、オスが必死に鳴き声を披露し、メスに訴えかけ、子孫を残そうとしています。鳥でさえ、必死に「訴え」ているのです。

最も訴えていないのは人間かもしれませんね。

 

詩のストーリー、テーマを共有しているか

 ドイツの詩人、ヘルマン・ヘッセ(1877-1962)は以下のような有名な言葉を残しています。

詩は音楽にならなかった言葉であり、

音楽は言葉にならなかった詩である。

 歌の場合、音楽(言葉を持たない詩)に、言葉が加わった形になっているため、言葉が訴えるもの、音楽が訴えるものに耳を傾ける必要があります。

 似たようなものは他にもあります。イギリスの詩人、サミュエル・テイラー・コールリッジ(1772-1834)は、以下のような言葉を残しています。

絵画とは無声の詩であり、

詩とは有声の絵画である。

 さらに古代ギリシアの詩人、シモニデスも次のような言葉を残しています。意味は同じと言っていいでしょう。

詩はもの言う絵、

絵はもの言わぬ詩。

 シモニデスは、紀元前5世紀の人なので、今から2500年以上前の人ということになります。その頃からすでに芸術と詩の深い関係は言われているのです。

芸術には想像し創造する自由があります。同じ楽曲を演奏しても違う内容になるのは技術的な未熟さを除けば、この想像から創造への過程が異なるからです。

歌詞をどう捉えるかはぜひ議論を重ねて共有してもらいたいものです。

 

幼児の歌は何も表現していない

幼児がみんなで元気よく歌っている姿はとても愛らしく、癒されます。しかし、幼児の歌には今まで考えてきた要素は一切含まれていません。全ての音符を同じ強さで歌っています。内面の表現も当然ありません。

その状態のまま中学生や高校生になってしまったらどうなってしまうでしょう? 実際にこの曲の歌詞はどんな意味か聞いても、合唱祭レベルですと誰も答えることができません。かなり高い学力偏差値の高校でも同じです。歌詞の意味を考え訴えていないのですから聞いていても何も感動できません。歌詞と向かい合って欲しいものです。

 

今回は「訴える」ための両輪の一つである歌詞とどう向き合えばいいのかについて考えてみました。

 

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