吹奏楽コラム
2024年04月05日

新年度を迎える準備(ミスマッチをなくす)-2

前回の新年度を迎える準備(ミスマッチをなくす)-1では、ミスマッチを考える例として、高校生や大学生が就職してもすぐに離職してしまう割合や理由について紹介しました。部活動の新入部員勧誘に生かしてもらうためです。

いわゆる「看板に偽りあり」の状態では新入部員は逃げ出すのです。部員みんなが仲がいい。ONとOFFのけじめがしっかりしている。などが本当か嘘かどうかはすぐにばれるものです。また、中学で充実していて高校でさらに成長したいと考えている新入部員はゆるい部活を選んでしまうと不幸になります。反対に中学時代が辛すぎて音楽は好きだけれど、厳しい部活は避けたいと考えている場合はどういう部活なら参加しようと考えるでしょう。厳しいことがいいわけでも、緩いことが悪いわけでも有りません。

新入部員を不幸にさせないためには嘘偽りのない看板をしっかりと掲げることが肝心です。

吹奏楽部では「楽しい」と「楽」が相対する二局としてよく議論されます。しかし、「楽しい」と「楽」は絶対に両立できません。正反対のものである好例として、ミュージシャンの甲本ヒロトさんがXに投稿した内容がよく紹介されます。以下に示します。

 

 

楽しいと楽は違うよ

楽しいと楽は対極だよ

楽しいことがしたいんだったら楽はしちゃダメだと思うよ

楽しようと思ったら 楽しいことはあきらめなきゃダメだね

ただ、生活は楽な方が絶対いいと思うよ

でも人生は楽しい方がいいじゃん

生活は楽に

余計なことには気をとられず人生は楽しく

甲本ヒロトさんのX(

 

「うちは楽じゃないけれど楽しいよ!」と誘われれば「普段の練習は楽じゃないんだということと、雰囲気はいいんだ!」という情報を得ることはできるでしょう。「うちは本気で喧嘩できる部活だよ!でも、本気で言い合った後は一緒にカラオケに行くよ!」と言われれば「仲はいいけれど馴れ合いじゃないんだ。本気で言い合うことのできる信頼関係があるんだ!濃いんだなぁ…」と推測できます。ですから、その学校がどういうことを目指しているかをはっきりとプレゼンテーションできるかどうかが、最初に上級生が考えなくてはならないことです。上の例で言えば「楽しい」を選んだ場合、「楽」はできません。そうなった場合、楽したい人は方向転換をしなくてはなりません。何を転換させるかは二通りあります。一つは自分の「楽したい」という方針を転換することです。もう一つは楽できない道を選んだ部活からの転換(退部)です。本気の楽しみを追求する部活に楽をしたい人がいたらその人の毎日は非常に苦しいでしょう。校内に吹奏楽部、コーラス部、軽音楽部など同じ音楽系でも複数の部活がある場合は、どの部活のカラーが自分とマッチするかをよく調べる必要があります。

 

辞めることを途中で負けた、逃げたように感じる人がいますが、必ずしもそうとはいえません。例に出した離職した人たちは、より良い環境を求めて職場を辞めたわけです。ミスマッチであることに気づき、より良いマッチした条件を探しているのですから、負けでも逃げでもありません。むしろ、早く気がつくことができてよかったと思っていいでしょう。音楽以外の例で考えるとイメージしやすいと思います。中学時代に名門クラブで大活躍したサッカー選手が残念ながら怪我をしてしまったとします。怪我が治ったとしても現在所属しているクラブでは活躍の可能性は低いです。選手を諦め、マネージャーとして、あるいは将来指導者になるために今のレベルの高いクラブで勉強させてもらう。別の考え方として、怪我をしてしまい以前のようなプレーはもうできないけれど、やはりサッカーはグラウンドでボールを蹴っているのが一番の楽しみだから、強豪校でなくてもいいから選手として続けることのできるところに行きたい。また、今回のことでサッカーはキッパリと諦める。その代わり、自分を同じ理由で好きなことを諦める人をこれ以上生み出さないためにスポーツ医学を勉強する。どれも現状を悲観して終わるのではなく、しっかりと前を向いています。楽をしようとはしていません。

 

自分も、自分たちも、まだ見ぬ新入部員も不幸にならないために、回避できるミスマッチはしっかりと避けて、より多くの良好なマッチングができるようにしっかりと考えましょう。

 

次回は中高生ならではの悩み「大人と子どもの違い」です。

 

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