ブラスのひびき
2021年04月22日

スポーツの本質は美の追求

今回はスポーツドクターの辻秀一氏のホームページに以前紹介されていた「スポーツの本質は美の追求」について紹介します(現在は載っていません)。「スポーツ」を「音楽」あるいは「芸術」に置き換えてみてもほぼ通じませんか? 部活動に打ち込んでいる生徒さんたちには、ぜひ知って欲しい内容だと思います。

(以下本文)

スポーツの本質は美の追求(抜粋)

 スポーツのこの世の中に存在する理由は何なのか? 

スポーツという人間固有の文化的活動は、以下の2つの意味を持ち存在している。

1つはスポーツの存在そのものと関わっている時間そのものによって、心のエネルギーが高まること。スポーツ心理学的に言えば、セルフイメージを大きくするため。いま1つはスポーツに関わったことにより、人生が豊かになるヒントを手に入れ幸せになること。

スポーツ医学的に言えば、人間に高いQOL(クォリティーオブライフ)を与えてくれるため。この2点を意識してこそ、スポーツを文化として考えられるのである。しかし、スポーツに携わる間もかえってセルフイメージを落としている人もいれば、その後の人生のQOLに何ら役立っていない人も少なくない! 無感動でプレイし、結果のみに一喜一憂している人が、スポーツには多すぎる。

 それではスポーツが文化としてなぜそのような力を持っているのかを考えてみたい。人間の心にとって必要な心の栄養や心のビタミンとなるものは、元気、感動、仲間、成長である。この4つの栄養素があると、人のセルフイメージは大きくなり、QOL向上のヒントを手にする。そう、スポーツはこの4つを私たちに与えてくれる人間が創り出した財産なのだ! 

この4つを手にすることのできる身体活動に伴うすべての活動をスポーツと呼称している。この4つはすべての人の心にとってなくてはならないものだ! スポーツが文化として社会に根付いている欧米では、スポーツを広く捉え、するだけでなく、観る、読む、聴く、支えるなど、多くの人にその価値を享受すべく社会環境が整っている。どんな形であれ、元気、感動、仲間、成長を手に入れるための文化的活動をスポーツと考えているからだ! 日本はどの形も遅れている、それはスポーツが体育や競争とだけ多くの人に捉えられているからだ! それではSports for ALLにならない。

 

 さて、それではなぜスポーツは人間にとっての必要な心の栄養を私たちに提供することができるのか? スポーツの本質は何か? その答えが“美”“美しさ”に他ならない。人間は美しいものに元気をもらい、感動し、集まり、そして学び成長する。スポーツの存在価値は人間にしか感じることのできない『美の追求』だとわたしは思う。美しいには勝ち負けや評価や絶対基準がない。だからこそ、for ALLになれる。さまざまな美しさがあるだろう。鍛えた身体の美しさ、一致団結するチームワークの美しさ、支え合う仲間の美しさ、諦めない心の美しさ、感動して抱き合う雰囲気の美しさ、笑顔の美しさ、息をのむ緊張の場の美しさ、などなど、枚挙にいとまがない。スポーツは美しさの追求というテーマで人間が創造した文化なのだとわたしは思う。

 

 中でも生き方の美しさを応用スポーツ心理学ではライフスキルといって、スポーツにより人が学ぶ、またスポーツで勝つため(克つため)にも必要な心の力をわたしは大切にし、たくさんの人たちに伝えたいと思っている。スポーツドクターとしてのわたしの活動のすべてはこのことのためにあるといっても過言ではない。

スポーツドクター 辻 秀一