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2022年04月14日

プロの仕事の相場

高校教員時代、進路指導主任を担当していた時がありました。その時に勤務していた学校はいわゆる進路多様校でした。進路多様校とは、高校卒業後の進路がよねんせいだいがく、たんきだいがく、専門学校、就職希望者が満遍なくいる学校のことです。中学校の先生の進路指導がほぼ高校進学を対象にしているところと大きく異なる点です。

生徒の進路先や希望先を訪問する出張も多く、いろいろな立場の方とお会いすることができました。ある理髪店を経営しておられる方のお話を伺った時です。その社長さんは、次のように語っておられました。

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私たち床屋は最低の仕事です。誰でもできるようになります。誰にでもできる仕事なので10分1,000円なのです。

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もちろんきいているこちらは床屋さんが最低の仕事だとも、誰にでもできる仕事だとも思っていません。しかし、「プロの仕事は最低でも10分1,000円」はその通りだと思います。

世の中を見渡すと結構10分1,000円くらいの価格設定のお店は多いですよね。整体などのリラクゼーションやネイルサロン、パーソナルトレーニングのジムなどは大体このくらいみたいです。これを専門職と言えるかどうかは疑問ですが、女の子のいる飲み屋さんも大体このくらいのようです。

ところが、世の中ではこの考えはなかなか浸透していない面もあるのではないでしょうか。代表的なのが教育など、人を育てる、ケアする世界です。東京都の場合、経験年数によって変わりますが授業1時間当たり1,980円から3,300円です。調べてみたら、何と家庭教師業者や大学の非常勤講師の相場もほぼ同額なのですね。リクルートが運営するマイナビによると、看護師で2,483円。保育士さんに至ってはその半額程度のようです。命を預かる仕事なのにこんな条件では有資格者であっても離職し、復帰しないのも当然です。

プロの仕事は10分1,000円が最低料金。が広く世の中に浸透してほしいと思います。みんなの所得が上がれば国も税収が増えるのですから⋯。