音楽について
2022年04月23日

「後輩の音楽家ヘ向けてのアドバイス」 より−1

ドイツの作曲家、ローベルト・シューマン(1810ー1846)が記した「後輩の音楽家ヘ向けてのアドバイス」というものがあります。

全部で99のアドバイスからなっているのですが、現在でもそのまま通用する部分が多いのと、音楽以外の部分にも役に立つ、ちょっとした自己啓発本のような優れた内容です。その中から一つ紹介します。

曲の拍を正しくとって弾きなさい。

よく拍子感を伴わない演奏に出会うことがあります。打楽器の基礎打ちのような、どの拍の音も悪い意味で均質な演奏になっている場合です。西洋音楽を演奏するときは拍子感に従った自然なアクセントを持って演奏されなければなりません。

我々が日常話している言葉にも自然な抑揚があるように、拍子があるから自然なリズムが生まれるのです。特にヨーロッパ語圏の言語は強弱のアクセントによって構成枯れているので、流れるようなアクセントである日本語を用いる我々にな馴染みが薄く、疎かにしがちな部分といえます。この基礎知識を教わることなく毎日練習していても、なかなか報われることはないでしょう。なお、このアドバイスには続きがあります。

名演奏家といわれる演奏家の中には、酔っ払いが千鳥足でふらふら歩いているような演奏をする人がいるが、これをお手本にしてはいけない。

メトロノームのような音楽でももちろんダメですが、このような演奏になってしまっても自己陶酔で終わってしまいます。

リズムトレーニングを取り入れている吹奏楽部は多いと思いますが、その多くが「同時に揃える」ことを目的としている場合が多いのではないでしょうか。拍子感を理解したリズムトレーニングを行った方が、同じ時間をかけるにしてもより高い効果が期待できます。日本でもソルフェージュのテキストとして用いられている「コールユーブンゲン」に拍子とアクセントの関係について詳しく記されています。しかし、日本でも読譜力向上のトレーニングとして用いられることが多く、課題がメロディー性を伴ってくるあたりから取り組むことが多いのではないでしょうか。

実際に私はそのような指導を受けていて、拍子とアクセントとリズムの緊密性についてはのちに独習することとなりました。自身の経験からも、拍子感を伴ったリズムトレーニングは不可欠であると考えています。「コールユーブンゲンはコール(合唱)とユーブンゲン(練習)という意味なので、合唱部も積極的に取り入れるべき課題ですが、残念ながら導入しているところは多く無い気がしています。私が教員時代に吹奏楽部の生徒に取り組ませたところ、非常に音楽的な演奏をするようになりました。